メタバース怪談「きもだめし」

きもだめし メタバース

メタバース怪談の様子

怪談:きもだめし

私は、映画研究会、映研サークルに所属していました。
映研では、夏休みになると、毎年、栃木県に夏合宿に行きます。
1年生の秋という遅い時期に入部した私は、2年生の夏、初めて夏合宿に参加したのです。
そこで、あのような体験をするとは、その時は想像すらしていませんでした。

夏合宿の2日目の夜
毎年恒例となっている「きもだめし」をするという事になりました。
2,3人のグループをくじ引きでつくり
森の中の道を歩き、橋を渡って、古いほこらに向かう。
そして、ほこらの前にある缶ジュースを持って帰るというルールでした。
往復5分ほどの距離でほこらには、監視役の先輩が1人立っているということでした。

くじ引きの結果、
とっても人が良い優しい男の先輩、A先輩と
超怖がりの男のこ 、同級生のB君
そして、女子の私という男女3人組になりました。

出発する順番もくじ引きで決めた結果、
私たちのグループは最後となりました。

待っている間、怖がりのB君は
「猫田さん、手を繋いでね、離さないでね」とかなり怖がっていました。

他のグループが、順々に出発し、帰ってきていました。
皆、「怖かった~」というものの、特にトラブルなく進んでいました。

そして、いよいよ、最終組、私たちグループの順番が来ました。

私を真ん中にして、3人で手をつなぎ、おびえながら出発します。
ざっざっざ
森を抜けると、右手に橋が見えてきました。
私が、「この橋ですね、きっと。」と言うと
A先輩がこう言いました
「いや、こんな近いわけがない」というのです。
するとB君が、「こっちの方じゃないかな?」といい
2人が橋とは違う道を歩き始めたのです。

二人は、私の手を引っ張りながら、どんどん歩いて橋から離れていきます。
不安になった私は
「引き返しませんか?」と言ったのですが
「もっと先にあるはずだよ」と、全く取り合ってくれません。

真ん中に私、左手をA先輩、右手をB君という体制で
どんどんスピードを上げて歩いていきます。
しかも、あんなに気さくな2人が、無言のまま、歩いていくのです。
私は、だんだんと恐怖を感じるようになってきました。

ざっざっざ
10分ほど歩いたでしょうか、
気が付くと、歩くたびに小枝が足に刺さるほどうっそうとして、
そこは、もう道ではなく、しかも、坂になっていて、
山を登り始めている事に気が付きました。

私は、息が上がり、汗だくになっているのに、
二人は、変わらず、無言のまま歩き続けています。
何故か、風や虫の音も聞こえません。
ただただ、私たちの歩く音だけが山の中に響いているのです。

このままじゃ、まずい!どうしよう。
私が不安に押しつぶされそうになっていると、後ろの方から

「とまれ~、お~い!
そっちじゃないぞ~」

あの声は、
あ!ほこらで監視役をしている先輩の声です。
私は、ほっとしました。
「よかった。探しに来てくれたんだ。助かった」と思いました。

ところが、、、
A先輩B君は、歩みを止めないのです。
どんどん、山道を、私の手を引きながら、止まらず歩いていくのです。

え?なんで?
呼び掛けている声が聞こえないの?
いやだ!助けて!
私は、そう思いましたが、恐ろしくて声が出ませんでした。
もうダメかもしれない、そう思った時

「とまれって!」
監視役の先輩が走って、私たちに追いつき、A先輩とB君を止めてくれたのでした。

その後、集合場所に戻ると、部員のみんなが心配していました。
部長がA先輩とB君に尋ねます。
「どう見ても、簡単な道で間違えるはずがないルートなのに、なんで山道に入ったの?」

「いや、あっちだと思ったんだよね、ごめんごめん」
あんな怖いことがあったのに、2人ともケロッとして、いるのです。
特に超怖がりだったB君でさえ、、怖がる様子もなくケロッとしているのです。
2人の冷静な態度が、私には、不気味に見えました。

一体、あれは、なんだったんでしょうか?
もし、あのまま3人で、山道を進んでいたらどうなっていたんでしょうか?
今でも、山道を歩くと、このことを思い出します。

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